談春と三三が圓朝の牡丹灯籠を語る落語会『牡丹灯籠「俺たちの圓朝を聴け!」』の西宮公演を聴きに行きました。
三日間の演目は以下の通り。
9月8日(金) | ||
1. | トーク | 談春・三三 |
2. | 落語「宮戸川」 | 三三 |
3. | お露と新三郎~出会いから三崎村~ | 談春 |
4. | お露と新三郎~お米談判まで~三崎村~ | 三三 |
5. | 落語「粗忽の使者」 | 談春 |
6. | トーク | 談春・三三 |
9月9日(土) | ||
1. | トーク | 談春・三三 |
2. | 落語「野ざらし」 | 談春 |
3. | お札はがし | 三三 |
4. | 栗橋宿 | 談春 |
5. | 落語「元犬」 | 三三 |
6. | トーク | 談春・三三 |
9月10日(日) | ||
1. | トーク | 談春・三三 |
2. | 落語「紙入れ」 | 談春 |
3. | お峰殺し | 三三 |
4. | 関口屋のゆすり | 談春 |
5. | 落語「粗忽の釘」 | 三三 |
6. | トーク | 談春・三三 |
三三のTwitter(X)に「東京かわら版」8月号が紹介されていて、特集が談春と三三の対談『俺たちの「牡丹灯籠」』だったので事前勉強用にネット注文しました。
この落語会は談春が企画し、三三に声を掛けて実現したとのこと。三三の実力は二ツ目時代から認めていたようです。
圓朝の牡丹灯籠はkindle版「三遊亭圓朝全集」で通しで読んでいました。一般的な牡丹灯籠は「お露と新三郎」の縮小版に「お札はがし」を加えたものなので、これだけ壮大な噺だとは思いませんでしたが、圓朝の高座を速記したものだったので興味深く読み進めることができました。
【一日目】
初日は「お露と新三郎~出会いから三崎村~(談春)」、「お露と新三郎~お米談判まで~三崎村~(三三)」です。2017年7月に下北沢の本多劇場で開催された「志の輔らくご」で志の輔師匠がこの壮大な噺に登場する人物の相関図と物語の概要を説明してくれました。その後に前述の圓朝全集を見つけてようやく全体像を把握することができました。
会場の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールには開場の1時間半前に到着。暑くて歩く気もないのでロビーで開場を待っていました。一日目は17時15分開場、18時開演の予定です。
開場予定時間を少し過ぎて入場となったのでグッズ売り場へ。お目当ては会場でしか買えない談春と三三の牡丹燈籠解説本です。
小さんは牡丹灯籠を演らなかったそうです。牡丹灯籠は三遊亭(圓朝作)なので柳家は演じなかったとのこと。
席に着いて本を読んでいると談春と三三の声が聞こえてきました。この落語会は3時間を超えるという事前のお断りでした。福岡で行われた最初の公演は談春と三三による牡丹灯籠の演目2題と大ネタ1題の組み合わせで3時間55分かかったそうです。その後の何度かの公演を経て、最近は3時間ほどに落ち着いたとのこと。今日の演目はこんな感じ。
最初のトークはこの落語会をなぜ企画したのかという談春の話から始まりました。
最初の演目は三三の「宮戸川」。半七とお花の濡れ場のシーンでサゲとなりました。
本編の牡丹灯籠は談春が口火を切ります。牡丹灯籠はとても長い噺なので談春は冒頭部分を簡単に説明して、山本志丈という医者の仲立ちでお露と新三郎が出会ってからお露が亡くなって亡霊となって新三郎を訪ねてくるまでを語ります。仲入りを挟んで三三のパートは訪ねてくるお露が亡霊であることを知った新三郎が幽霊封じをしたために会えなくなったお露を新三郎に会わせようと同じく亡霊となっていたお露の侍女お米が新三郎の身の回りの世話をしていた伴蔵とお峰にお札はがしを頼み込むところまでを演じます。
談春の落語は「粗忽の使者」。筋は判っていますが談春の語り口に引き込まれていきます。会場は大爆笑でした。
最後は明日に向けたトークで終わりました。3時間10分の公演でした。
【二日目】
二日目は12時15分開場、13時開演です。今日の演目はこんな感じ。
トークに続いて談春の「野ざらし」で始まります。少しずつアレンジされているようです。
二日目の牡丹灯籠は三三の「お札はがし」から始まります。お米に頼まれたお札はがしにお峰の入れ知恵で伴蔵は百両の謝礼を要求します。次の日に伴蔵とお峰は新三郎のお守りを取り上げるために行水を勧めます。新三郎は行水をしている間に中身が取り替えられたお守りを身につけますが、お守りの用はなさなくなっています。その夜にお米が約束の百両を持ってきたところで仲入りに入ります。仲入り後は談春が「栗橋宿」を語ります。最初はお札を剥がす場面から始まります。お札を剥がした直後にお露とお米は火の玉になって新三郎の家に入ってしまいました。翌日、心配になった伴蔵とお峰が新三郎の家を訪ねると新三郎は取り殺されていました。伴蔵とお峰はお米から手に入れた百両を持って伴蔵の郷里である「栗橋宿」で関口屋という屋号で荒物屋を始めます。この店がうまくいって懐事情が良くなった伴蔵はお国という女中と懇ろになります。このお国は亡くなったお露の継母でした。今日はここまで。
最後の演目は三三が得意とする「元犬」。三三のテンポの良い語り口で一気にサゲまで持っていきます。
最後のトークではこの時間帯を撮影タイムとすることにしていたことが明らかになります。その瞬間に全員が写真を撮り始めました。
今日は3時間15分の公演でした。
【三日目】
三日目は二日目と同じ12時15分開場、13時開演です。今日の演目はこんな感じ。
いつものトークが終わり、談春の「紙入れ」で幕開けです。この後の噺に繋げるという趣旨で間男の話を選んだとのこと。図太い女将さんの描写は談春ならではですね。
牡丹灯籠は三三の「お峰殺し」で始まります。伴蔵とお国の関係を知ったお峰が伴蔵に離縁を迫り、挙げ句の果てに過去の事情がバレるのを恐れた伴蔵に河原で刺し殺されます。お峰の四十九日を済ませると関口屋の奉公人がお峰の怨霊に取り憑かれ次々に熱に浮かされたように伴蔵の悪事を話し始めます。これを治療しようと栗橋宿に逗留している江戸の名医を呼んできます。この医者がお露と新三郎の間を取り持った山本志丈でした。伴蔵の悪事を明らかにしないことを条件に伴蔵にたかり始めます。続いて談春の「関口屋のゆすり」。お国と伴蔵の関係を知ったお国の亭主の宮邊源次郎が伴蔵をゆすろうとします。伴蔵は山本志丈から聞いていた宮邊源次郎とお国の江戸での悪事をネタに逆に脅しをかけます。お国はお露の父親である飯島平左衞門の妾でした。宮邊源次郎はお国と共謀して飯島平左衞門を殺し、屋敷の金を持ち出して出奔したのでした。
最後の落語は三三の「粗忽の釘」。素晴らしい語り口でサゲまで一気に持っていきます。会場は大爆笑に。
最後のトークは千秋楽ということもあって簡単に終わりました。最後は毎回の三本締めで終わりました。今日は3時間の公演でした。
とても面白い企画でしたし談春と三三という組み合わせも完璧だと思います。牡丹灯籠全編を再現して欲しいと思います。